養育費の取り決め方について弁護士が分かりやすく解説

養育費の取り決め方について

養育費ってどうやって決めればいいの?」こんな疑問をお持ちではありませんか?

相手とお金の話をするなんて、考えるだけで気が重いですよね。

私は、これまで数多くの養育費問題を取り扱ってきて、途方に暮れる依頼者の姿を幾度となく目にしてきました。

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だからこそ、あなたの不安は痛いほど分かります。

養育費の決め方の基本

離婚後に養育費を取り決めずにそのままになってしまうケースは珍しくありません。

厚生労働省の調査によると、母子家庭の約53%父子家庭の約72%は離婚時に養育費の取り決めをしていないという結果が出ています。

なぜ多くの親が養育費の話し合いに踏み出せないのでしょう?

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周囲の声に耳を傾けると、次のような本音があるようです。
  • 取り決めの交渉がわずらわしい
  • 相手はどうせ払う気がないと思ってしまった
  • 相手に支払うお金がないんじゃないかと思った
  • とにかくもう相手と関わりたくない

心当たりはありませんか?

離婚に至るまでに色々あった分、顔も見たくない、話し合いなんて無理…そんな風に感じてしまうのも無理はありません。

しかし、取り決めをしなかった場合、養育費が支払われない可能性は格段に上がります。

現に、母子世帯の56.6%が「養育費を一度も受け取ったことがない」と回答しており、離婚時に何も取り決めをしなかった場合では、大半の家庭が養育費を受け取れていないとの調査結果もあるのです。

養育費を確実にもらうためには、まず話し合いで取り決めを行うことが出発点となります。

養育費の話し合い

養育費には、子どもの衣食住教育費医療費習い事レジャー活動にかかる費用など様々なものが含まれます。

とはいえ、「何から始めればいいの?」と戸惑ってしまいますよね。

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そこで、養育費の決め方の基本的な流れを押さえておきましょう。

1,両親で話し合う

まずは父母間で養育費の金額や支払方法について話し合います。

標準的な養育費算定表を参考にすれば、お互い納得しやすい金額の目安がつかめるでしょう。

参考 養育費の算定表について詳しくはこちら

2,合意内容を書面に残す

話し合いで合意できたら、内容を必ず書面に残します。

口約束で済ませず、公正証書という形にしておけば法的な強制力が生まれ安心です。

参考 養育費の公正証書について詳しくはこちら

3,家庭裁判所で調停を申し立てる

当事者間で合意できない場合は、家庭裁判所に養育費請求の調停を申し立てます。

調停委員を交えて話し合いを行い、合意に至れば調停調書が作成されます。

参考 養育費の調停について詳しくはこちら

4,審判・裁判で決めてもらう

調停でも決着しない場合、裁判所が最終的な金額を決定します。

家庭裁判所での審判や離婚訴訟の判決による決定です。

裁判になった場合でも、基本的には算定表に基づいた妥当な金額が判断されます。

参考 養育費の審判について詳しくはこちら

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大切なのは、「何も決めないまま」にしないことです。
まずはしっかりと取り決めを行いましょう。

不安と養育費の相場

一体いくらくらいが妥当なんだろう…?」養育費の金額については、多くの方が頭を悩ませるポイントでしょう。

高すぎれば相手が首を縦に振らないかもしれないし、低すぎれば子どもの生活が心配ですよね。

実際の相場感を知らないままでは、話し合いもモヤモヤと堂々巡りになってしまいがちです。

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そこで役立つのが「養育費の算定表」です。

養育費には明確な法定計算式があるわけではありませんが、一般的に父母それぞれの収入と子どもの人数・年齢等から算出するのが通例です。

裁判所が公表している算定表を用いれば、複雑な計算をしなくても、妥当な金額の目安を把握できます。

この算定表は2019年に改定され、旧来の基準よりも月額で1〜2万円程度増額された水準になりました。

現在では裁判所での調停・審判だけでなく、当事者同士の話し合いでも広く利用されており、養育費の取り決めを円滑に進めるための強い味方といえるでしょう。

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では、具体的にどの程度の金額が相場なのでしょうか。

もちろんケースによって異なりますが、一つの目安として厚生労働省の調査結果があります。

それによれば、母子家庭で養育費を受け取っている場合の平均月額は約5万円と報告されています。

子どもが1人の場合は平均約4万円2人なら約5.8万円3人では約8.7万円と、子どもの人数に応じて金額も上がっていきます。

一方、父子家庭(母親が支払う側)では平均月額が約2.7万円と低めです。

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これは、一般的に母親より父親の方が収入が高く、父親が親権者となるケースでは養育費自体が少額になりやすい傾向があるためだと考えられます。

こちらの「養育費自動計算ツール」では最新の算定表を基に「大体このくらい」という金額が計算できますので利用してみて下さい。

算定表で確認してから話し合いに臨んだほうが、「相場より大きく外れた要求ではない」と相手に納得してもらいやすくなる場合もあります。

根拠のある数字を示せば、感情的な衝突もぐっと減らせるはずです。

そんなに払えない!」と最初は怒り気味だった相手が、算定表を見せると渋々了承した…なんて場合も珍しくありません。

実のところ、裁判になっても算定表通りの金額になる可能性が高いので、相手にとっても受け入れるメリットがあるのです。

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まずは算定表を参考に、双方が納得できる落とし所を探ってみてください。

公正証書の重要性について

公正証書の重要性について

最後に、養育費を取り決めるうえでもっとも強調したいポイントが公正証書の重要性です。

一度取り決めた養育費をきちんと支払ってもらうには、公正証書という形で証拠と強制力を持たせておくことが極めて重要です。

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公正証書にしておくと具体的に何が違うのでしょうか。
主なメリットは次の3点に集約されます。

メリット1(強制執行が容易になる)

公正証書に強制執行受諾条項(「支払いが滞った場合は直ちに強制執行されても異議ありません」といった文言)を入れておけば、養育費の不払い時に裁判を経ず相手の給与や預貯金を差し押さえることが可能です。

いざというとき迅速に強制執行できるため、泣き寝入りを防げます。

メリット2(合意内容でもめにくい)

公証人が作成した公正証書は公文書として強い証拠力を持ちます。

そんな約束聞いてない」と相手に言い逃れされにくく、後から養育費の約束を反故にされるリスクを大幅に減らせます。

メリット3(財産開示手続を利用できる)

2020年の民事執行法改正により、公正証書で養育費を取り決めていれば、裁判所で相手の財産状況を開示させる財産開示手続を利用できるようになりました。

もし相手が支払いを拒み続けても、法の力で給与の勤務先や預金口座などを洗い出し、差押えに踏み切ることが可能です。

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このように公正証書は、支払わない相手に法的プレッシャーを与える「切り札」にもなるのです。

公正証書を作成するには、公証役場で公証人に依頼しなければなりません。

手間や数万円程度の手数料はかかりますが、これで毎月の養育費が支払われる安心を得られるなら安いものではないでしょうか。

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将来のトラブルを防ぐためにも、養育費の取り決めは可能な限り公正証書に残しておくことを強くおすすめします。

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