離婚時に「養育費は毎月ちゃんと払うよ」と口約束したのに、いざ蓋を開けてみたら支払いが滞っている——そんな状況に、途方に暮れていませんか?
「あのとき公正証書でも作っておけば……」という後悔や、「このまま泣き寝入りするしかないの?」という不安で、夜も眠れないシングルマザー・シングルファザーも少なくありません。
実のところ、口約束だけの養育費でも諦める必要はありません。

口約束の法的効力と証明の壁
「そもそも口約束に法的効力はあるの?」という点でしょう。
実のところ、法律上は離婚時の養育費の合意に特別な形式は必要なく、口頭での約束でも契約として有効です。
民法上、当事者間で養育費の金額や支払方法について合意が成立していれば、それだけで債務(支払い義務)が発生します。

とはいえ、問題は「それをどう証明するか」にあります。
残念ながら口約束というものは形に残りません。
「そんな約束はしていない」と相手にシラを切られてしまえば、約束の存在や内容を立証するのは容易ではありません。
特に調停調書や公正証書といった公的な記録がない場合、証拠集めのハードルが高くなるのです。

一般的には、養育費の額を話し合った際のメールやLINEのやり取り、実際に支払われていた期間があるなら通帳やアプリの入出金明細などが有力です。
例えば、「2024年3月○日 養育費の件(3万円で合意)」といったメールが残っていれば理想的ですし、振込人名義が元配偶者となっている定期入金記録も「支払いがあった=約束があった」ことを裏付ける材料になります。

万が一、証拠が十分に揃っていれば、あなたには次のステップとして法的手段が開けてきます。
逆に、証拠が不十分な場合は戦い方を切り替える必要があります。
口約束という見えない契約をめぐって困惑している方は、一度どんな証拠があるか冷静に洗い出してみましょう。

今からでも間に合う養育費請求策
「口約束だけだったのに、今さら請求なんてできるの?」と尻込みしている方もご安心ください。
今からでも間に合う対策はきちんと存在します。
ここでは、養育費を取り戻すために取れる具体的なステップを順を追って説明します。

①内容証明郵便などで支払いを正式に求める
まず相手に対し、養育費の支払いを改めて要求する意思を明確に示すことが大切です。
単なる口頭ではなく、内容証明郵便で「○年○月分からの未払い養育費○万円を支払ってください」という通知を送れば、公式に請求の意思表示をした証拠になります。
この請求行為を行った時点以降の分については、後述の調停や訴訟でも遡って請求が認められる起点になり得ます。

②家庭裁判所で調停を申し立てる
相手との直接交渉で埒が明かない場合や、そもそも話し合い自体が難しい場合は、家庭裁判所で養育費請求調停を申し立てます。
調停申立ての際には申立書に「毎月いくらの養育費を求めるか」「未払い分も含めてどうしたいか」等を記載します。
調停の場では調停委員(中立な第三者)が双方の言い分を聞きながら、合意点を探ってくれます。
緊張するかもしれませんが、リラックスして臨んでください。
無事に調停が成立すれば、調停調書という効力の強い書面が残ります。

③地方裁判所で訴訟を提起する
調停でも合意に至らなかった場合や、どうしても過去の未払い分まで含めて法的に決着をつけたい場合は、地方裁判所に訴訟を提起することになります。
訴状には「○年○月○日に養育費月額○万円の支払い契約を締結したが支払われていないため○万円の支払いを求める」といった内容を盛り込み、証拠としてメールや通帳記録を提出します。
繰り返しになりますが、訴訟は証拠勝負です。

まずは話し合いによる解決が最善策
まずは相手と話し合い、口約束を文書化することが望ましいです。
特に、公正証書として残すことで、相手が養育費を支払わなかった場合でも強制執行が可能になります。
チェック 養育費の公正証書に入れるべき項目と作り方について解説
公正証書は裁判所を通さずに強制執行を行えるため、法的に強力な手段です。
最後に、口約束だけの養育費でも決して泣き寝入りする必要はありません。
たとえ今は未払いに苦しんでいたとしても、適切な手順を踏めば未来を変えることができます。
