養育費は子供からでも親に請求できる?

養育費は子供からでも親に請求できる?

養育費の未払いに悩む親の姿をみて、何もできない自分の悔しさにグッと耐えているお子さんは多くいます。

中には高校生でアルバイトをして自分で学費を払い、食費の足しにと残ったお金を母親に渡しているといったお子さんもいらっしゃいました。

弁護士
私は、これまでに養育費について、未成年のお子さんから何件か相談の電話を受けたことがあります。

養育費を払ってくれない父親に自分で請求する事は出来ますか?」といった相談です。

お子さんが「困っている親を助けたい」「自分の力でなんとかしたい」そう思うのは当然の流れだと思います。

弁護士
残念ながら、今の日本の法律では、未成年者が自分だけで法的手続きを行うことはできません。

未成年の子自身には訴える手段が限られる現実…これは子供にとって悔しく辛い状況かもしれません。

養育費は、子どもと離れて暮らす親非監護親)が、直接養育にあたっている親監護親)に対して支払義務を負うものです。

つまり、権利義務でいえば、監護親の権利、非監護親の義務となり、親は未成熟の子を扶養する高度な義務を負っています。

弁護士
民法877条1項では「直系血族(親子)は互いに扶養する義務がある」と明記されており、離婚して親と子が別居していても親の扶養義務は消えません。

子供自身が親に扶養料を請求する事は出来る?

子供が成年(18歳以上)になれば状況は一変します。

2022年4月の民法改正で成人年齢が18歳に引き下げられ、高校卒業前後の年齢から子供自身が法的に行動できるようになりました。

大学進学の夢を諦めたくない」そんな強い決意を胸に、18歳になった子が親に扶養料を直接求めるケースも現れています。

弁護士
例えば専門学校へ進学したいのに学資が足りない場合、子供本人が非監護親(別居している親)に対して不足分の支援を求めることが可能なのです。

実際に、大学や専門学校の費用を巡り、子供から親へ支払いを請求する例があります。

では、一体どれほどの学費が子供の肩にのしかかっているのでしょう?

文部科学省のデータによれば、私立大学理系の場合で4年間の学費平均約542万円にも達します。

これは全国の大学の授業料等を調査し、年約135万円×4年約540万円という計算式で導き出された数字です。

弁護士
国公立大学でもトータルで約250万円以上は必要で、この金額を母子家庭が単独で捻出するのは簡単ではありません。

だからこそ、18歳を迎えた子供が「自分の未来は自分で守る」ために立ち上がるのは自然な流れと言えます。

相手の親に直接連絡して交渉する子もいますが、もし非監護親が支払いを拒否した場合、成年に達した子供が扶養料の支払いを求めて家庭裁判所に「扶養料請求調停」を申し立てることができます。

弁護士
また、一度決まった養育費であっても、その後の事情変更に応じて、金額の変更を求める調停を起こせるのです。

親の“養育費ゼロ”合意に隠された子の権利

どうしてあのとき養育費を断ってしまったのか…」と思っている方も多いのではないでしょうか。

ある調査では、離婚時に養育費の取り決めをしなかった母親の約半数が「相手と関わりたくなかった」を理由に挙げています。

確かに、暴言やモラハラに苦しめられた過去があれば、二度と元配偶者と顔を合わせたくないと感じるのも無理はないでしょう。

しかし、親同士が交わした「不払いの約束」であっても、それによって子供の権利が奪われることはありません。

法律上、そのような合意は父母間では有効だとしても、「子供には効力が及ばない」と解釈されます。

弁護士
そんな約束は無効だ」と子供側から主張できる余地が法律に残されています。

実際、民法上も親の合意だけで子の扶養に関する事項を根本的に変更することは許されないと考えられています。

つまり、子供には自分の親に扶養を求める権利があるのです。

この権利が守られなければ、生活に困窮したり進学を諦めざるをえなくなるのは子供本人となってしまいます。

では、一度「養育費はもらわない」と決めてしまったら一切請求できないのかというと、決してそんなことはありません。

状況が変わった時は、約束を見直すチャンスです。

弁護士
家庭裁判所に改めて調停を申し立て、子供のために必要な費用負担を求めることは可能なのです。