養育費の不払いを国や自治体が立替えてくれるって本当?

養育費の立替払い制度とは?

国や自治体が養育費を立て替えてくれるらしい」──そんなウワサがSNSやニュースでちらほらと話題に上るようになりました。

離婚した家庭にとって、養育費の未払いは悲鳴を上げたくなるほど深刻な問題です。

実際、離婚後に養育費を継続的に受け取れている母子家庭は全国でわずか28.1%に過ぎません。

だからこそ、「国が肩代わりしてくれる」という話に期待と不安が入り混じるのも無理はありませんよね。

私は、「本当に国が払ってくれるんですか?」という問い合わせを度々受けてきました。

結論から言えば2025年現在、国がすべての未払い養育費を立替えてくれる全国制度は存在しません。

期待が高まる一方で、制度整備はまだ追いついていないのです。

しかし、だからと言ってそれが完全なデマというわけではありません。

ここ数年で動き始めた自治体レベルの先進的な取り組みがあるのも事実です。

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私も最初にこのウワサを耳にしたとき、「もし本当ならどれほど多くの親子が救われるだろう」と胸が高鳴りました。

自治体の立替え支援

養育費の立替払い申請の流れ

市役所が養育費を払ってくれました。まるで天使の助けです…」——2024年秋、埼玉県さいたま市で立替え支援を受けたCさんは、涙声でそう語りました。

彼女は申請が認められたことで、「これであと3ヶ月は子どもにちゃんと食事をさせてあげられる」と肩の荷を下ろした様子でした。

さいたま市は政令指定都市として全国で初めて、養育費の立替え払いに踏み切った自治体です。

支払われない養育費について市がまず元配偶者に督促し、それでも支払われなければ、月額5万円を上限に最長3ヶ月分をひとり親に立替払いする仕組みです。

立替えた分は後日、市が元配偶者から直接回収します。

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まさに一時的とはいえ「行政が養育費を立て替えてくれる」制度が実現した瞬間でした。

養育費立替支援事業(埼玉県さいたま市)

まず市が元配偶者(支払義務者)に支払いを促し、それでも未払いの場合に市がひとり親(養育費権利者)へ養育費を立替え、後日元配偶者から市が立替金を回収する流れになっています。

しかし、この制度は誰もが利用できるわけではありません。

例えば、「さいたま市」の対象条件はかなり限定的で、児童扶養手当を受給する低所得のひとり親であり、公正証書や調停調書など債務名義があること、直近の養育費が未払いであることなど厳しい要件が課されています。

利用は1世帯1回限りで、立替え額も合計15万円5万円×3ヶ月)までと限度があります。

養育費立替支援事業(兵庫県明石市)

兵庫県明石市」でも、養育費が支払われないときに、養育費を支払うべき義務者に対して、市が働きかけをし、それでも支払いがない場合に、養育費を受け取るべき人に対して、市が立替払い最大3ヵ月分、上限月額5万円)をした上で、義務者に対して督促を行っています。

以下のすべてにあてはまる人

  • 申込時にひとり親家庭であり、こどもが明石に住んでいる
  • 調停調書や公正証書などの債務名義で養育費の取決めをしている
  • 前月分の養育費を受け取れていない

養育費保証会社の保証料を負担する自治体も

自治体による支援の多くは、直接立替えではなく、保証会社(民間)の活用を促すタイプです。

兵庫県明石市」では、全国に先駆けて「養育費立替えのパイロット事業」を開始しました。

市が業務委託した保証会社が、養育費の取り決めをした、ひとり親家庭との間で養育費保証契約を締結し、「初回の保証料上限5万円)」を市が負担するといった内容です。

養育費の不払いがあった場合は、保証会社がひとり親家庭に対し養育費の不払い分を立て替えて支払い、別居親に対し立替分を督促して回収するといった内容です。

明石市の泉房穂市長(当時)は「養育費不払いによる子どもの貧困を放置しない」という信念で財政負担のリスクより子どもの利益を優先し、この試みに踏み切りました。

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ヨーロッパのスウェーデンやドイツでは国が養育費を立替える制度が定着しており、日本もそれに倣うべきだという思いが背景にあったのでしょう。

宮城県仙台市」は養育費保証契約を結ぶ際に支払う保証料のうち最大5万円を補助しています。

大阪市」も「養育費保証促進補助金」により保証料を上限5万円(または月額養育費の額まで)の範囲で補助し、「福岡市」でも同様にひとり親が負担した保証料を一度だけ5万円まで支給しています。

こうした自治体の制度では、市区町村が養育費そのものを払ってくれるわけではありません。

あくまで民間保証サービスを利用する際の費用を肩代わりするに留まります。

とはいえ、「費用のハードルが下がれば保証会社を利用しやすくなる」と期待する声は多く、保証料補助の制度は全国へ徐々に広がってきています。

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自治体からのバックアップを得て保証会社を利用すれば、たとえ元配偶者が支払わなくても毎月の養育費がストップしない可能性が高まるのです。

養育費の不払い立替えについてまとめ

養育費の未払い問題は、ひとり親家庭の生活と子どもの未来に大きく影響します。

だからこそ、国や自治体の制度を上手に活用しつつ、私たち自身も声を上げ続けることが大切です。

現時点では「国や自治体が完全に肩代わりしてくれる」夢のような状況には至っていません。

しかし、2024年の法改正や数々の先進的な地域の試みが示すように、未来に向けた一歩一歩の前進は確実に始まっています。

あなたも、「どうせ無理」と諦めてしまう前に、お住まいの自治体にどんな支援策があるか調べてみませんか?

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そして、必要に応じて弁護士や公的機関に相談し、小さな一人ひとりの努力を積み重ねていきましょう。

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