「毎月必ず養育費を払う」と公正証書で約束してあるのに、実際には振り込みがない...。
そんな現実に、どうしたらいいのか分からず不安で胸がギュッとなりますよね。
私は日々養育費問題に取り組む弁護士として、この理不尽な状況を見過ごせません。

強制執行で養育費を取り立てる
公正証書があるなら、次の一手は“強制執行”という法的な切り札です。
相手が約束を守らない以上、こちらも法的に容赦なく臨む覚悟が必要でしょう。
公正証書に強制執行受諾条項(「支払いが滞った場合は強制執行されても異議ありません」という文言)が盛り込まれていれば、家庭裁判所で調停や裁判を経なくても、直ちに相手の財産に対する差押手続きが可能になります。
実際、公正証書は裁判を経ずに強制執行できる唯一の文書であり、口約束や私文書による合意とは異なり、わざわざ調停や裁判をしなくてもすぐに法の力で支払いを確保できる強力な効力を持つのです。
強制執行とは文字どおり、支払い義務者の給与・預貯金口座・不動産などの財産を差押えて、強制的に養育費を回収する手続きのことを指します。
例えば会社員である元配偶者なら、裁判所を通じて勤務先に給与の差押命令を送り、毎月の給料から養育費を天引きさせることができます。
また、相手名義の銀行口座が判明していれば、その預金口座を差押えて未払い分を回収することも可能です。

もっとも、公正証書であれば何でも即差押えできるわけではありません。
注意すべきは公正証書に強制執行を認める文言(強制執行認諾条項)の有無です。
この文言がない場合、公正証書を作成していても直ちに強制執行することは認められないため注意が必要です。
公証人に作成を依頼するときは必ず入れてもらうよう確認しましょう。
逆に言えば、その条項さえあれば公正証書は最強の武器になります。

差押命令が会社に届けば職場にも未払いが発覚しますから、相手にとっても大きなプレッシャーとなるでしょう。
「こんなことをされたら困る」と思わせることで、ようやく支払いに応じてくるケースも少なくありません。
では、実際に差押えを行うには何が必要で、どのように進めればいいのでしょうか?
次では具体的な手順と注意点を解説します。