どうしたらいいでしょうか?


相手の住所が不明でも養育費は請求できる?
「元夫の住所が分からないのに養育費請求なんて無理!」──そんな焦燥感に駆られてはいませんか?
離婚後に相手が音信不通になるケースは珍しくありません。
私の事務所にも「請求相手と連絡がつかない」という相談が日々寄せられます。
実際、養育費を請求する家庭裁判所の調停では相手の住所情報が必要となりますが、住所が分からないからといって、完全に手詰まりになるわけではありません。

佐藤さんは半ば諦め顔でしたが、弁護士が公的な手段で住所を調べ上げれば手続きを進めることができます。
つまり、まずは相手の住所を特定する作業こそ必要ですが、逆に言えば「住所さえわかれば養育費は諦めなくていい」のです。
とはいえ、「自分でそんな調査なんてできない…」と不安に感じるでしょう。
大丈夫、方法はちゃんとあります。
離婚時に取り決めをしていない方でも、これから紹介する役所の記録調査や専門家の力を借りることで糸口が見えてきます。
「えっ、そこまでやる必要あるの?」と思うかもしれませんが、お子さんの将来を守るための大切なステップです。

役所の記録から住所を追跡する方法
元夫の住所が分からないとき、真っ先に思い浮かぶのは市区町村役場での調査ではないでしょうか。
「でも、プライバシーがあるし他人の住所なんて教えてもらえないんじゃ…?」と半信半疑になりますよね。
それでも、役所には相手の最新住所を知る手がかりが眠っている場合があります。
実際に私は、離婚後に元夫の所在がつかめないBさんが役所で情報を入手できるようサポートした経験があります。

戸籍の附票で住所履歴を辿る方法
まず試したいのは「戸籍の附票(ふひょう)」の取得です。
戸籍の附票とは、その戸籍に入ってから現在までの住所の履歴が記載された書面です。
例えば結婚していた当時、あなたが元夫と同じ戸籍に入っていたのであれば、離婚後でも元夫の戸籍の附票を請求できます。

Bさんの場合も、元夫との離婚時に抜けた戸籍の附票を市役所で取り寄せ、無事に元夫の新住所を突き止めることができました。
ただし注意点もあります。
ココに注意
元夫が離婚後に本籍(戸籍の所在地)を移してしまっている場合(転籍といいます)、残念ながらあなたは元夫の戸籍の附票を直接取ることができません。
離婚によって他人になった以上、新しい戸籍には元妻であるあなたの名前が載らないからです。
それでも諦めないでくださいね。
子どもが元夫の戸籍に入っている場合は、親権者であるあなたが、子どもの戸籍の附票を取得することで元夫の住所を知ることが可能です。

「そんな方法があるなんて!」とBさんは驚いていましたが、これも一つの抜け道なのです。
さらに、戸籍の附票取得には「正当な理由」が必要ですが、養育費請求は公的に認められる正当な理由になります。
役所の窓口では「養育費請求のために現住所を知る必要がある」という内容の理由書を求められることがありますが、離婚届受理証明書や調停調書、公正証書など養育費に関する資料を提示すればOKです。
手数料は1通あたり300円程度(自治体によりますが)で、本人確認書類(運転免許証など)を持参して請求しましょう。

住民票の除票で転居先を追うテクニック
戸籍附票で得られた住所が古かった場合でも、そこで諦める必要はありません。
次なる一手は「住民票の除票(じょひょう)」を活用することです。
除票とは、ある住所から住民票が抜かれた(転出した)場合に発行される記録です。

そこに元夫が転出していたなら、その転出先の役所でさらに住民票(またはまた除票)を取得し…というように住所の足取りを追跡していくことが可能です。
まるでパンくずを辿るように、一歩ずつ現住所へ近づけるわけですね。
私の知る限り、この方法で2〜3回の転居先までは追えたケースがあります。
例えば以前担当したケースでは、東京→大阪→福岡と転々としていた元夫を、除票の情報を頼りに3つの自治体で住民票を取得し直し、ようやく最新住所を捕捉できました。
依頼者のCさんは「まさか追っかけっこみたいに住所を探すことになるなんて…」と苦笑していましたが、最後はホッと胸を撫で下ろしていました。
もちろん、この追跡にも限界はあります。
元夫が転居届を提出していない場合(いわゆる“蒸発”状態)や、DV被害などを理由に住民票を閲覧制限する「支援措置(住民票ロック)」をかけている場合には、役所での調査が行き詰まることもあります。
実際、ある依頼者のケースでは、元夫が意図的に住所変更をせず行方をくらましており、市役所では手がかりが得られませんでした。
そのときCさんは「もう方法がないのでは…」とガクッと肩を落としました。

そんな“役所の網”から漏れてしまった相手でも、プロの力を借りれば道は開けるのです。
弁護士等のプロに任せる住所探索
自力での調査が難航すると、心はイライラと不安でいっぱいになりますよね。
役所で門前払いを食らったり、手がかりゼロの状況では、「もうお手上げ…!」と感じてしまうのも無理はありません。
そこで次に検討したいのが、法律の専門家に住所調査を依頼する方法です。

弁護士の職務上請求で住民票・戸籍を取得
弁護士には「職務上請求(しょくむじょうせいきゅう)」という強力な権限が与えられています。
これは弁護士が業務遂行上必要な情報を、公的機関や会社から取得できる制度です。
養育費の請求でも、この職務上請求がしばしば活用されます。
例えば、弁護士であれば依頼を受けてすぐに元夫の戸籍附票や住民票を職務上請求によって取り寄せ、迅速に最新住所を突き止めることが可能です。

私も実務で職務上請求を使いますが、市役所ごとに理由書を書く必要がない分スピーディーに調査が進みます。
さらに弁護士は、戸籍・住民票だけでなく、相手の勤務先や財産状況の調査も視野に入れて行動します。
養育費を確実に払ってもらうには、相手に支払い能力があるか(仕事は何をしているのか、預貯金はあるのか)を掴むことも大切です。
過去のケースでも、私は職務上請求で得た情報から元夫の勤務先を割り出し、給与差押えによる回収までスムーズにつなげたことがあります。
依頼者のDさんは「こんなに早く給料から天引きできるなんて!」と驚いていました。

弁護士会照会で電話番号や口座から住所を特定
加えて、弁護士には「弁護士会照会」という独自の調査手段もあります。
これは弁護士会を通じて企業や団体に照会を行い、必要な情報の提供を受ける制度です。
例えば「元夫の携帯番号は知っているけど住所が不明…」という場合、弁護士が携帯電話会社に弁護士会照会をかけて契約者の登録住所を教えてもらえる可能性があります。

このとき依頼者のEさんは「まさか電話番号から住所がバレるとは本人も思ってなかったでしょうね…」と苦笑いしていました。
ただし、携帯会社側の登録住所が古いままだったりすると現住所とは異なることもあるため、そこは他の方法と組み合わせてクロスチェックします。
同様に、銀行口座の情報から住所を探ることも考えられます。
もし元夫の銀行口座や勤務先がわかっているなら、弁護士が銀行や会社に照会をして所在情報を得ることも可能です。
実際に私は、養育費未払いの元夫が昔使っていた銀行口座を手がかりに、銀行経由で住所を割り出したことがあります。

もちろん弁護士に依頼すれば費用はかかりますが、それは先行投資だと考えてください。
例えば養育費が毎月3万円でお子さんがあと10年成人しないとすると、受け取れる総額は3万円 × 12ヶ月 × 10年 = 360万円にもなります。
仮に調査に数十万円の費用をかけても、長期的に見ればプラスになるケースがほとんどでしょう。
何より、「専門家に任せている」という安心感はお金に代えられない価値があります。
実務的にも、弁護士に依頼すれば数週間以内に住所を突き止められることも多く、あなたが何カ月も悩み右往左往するよりずっとスピーディーです。

どうしても相手が見つからないときの最終手段
役所を回り、専門家にも依頼した。
それでもなお、元夫の居場所が霧の中…という場合、心はまさに絶望感でいっぱいになるでしょう。
「ここまでやってダメならもう無理かも…」と感じるお気持ち、痛いほどわかります。
ですが、最後の最後まで 「どうしようもない」なんてことはありません。

公示送達と審判:相手不在でも裁判を進める
まず、法的手続き上の裏ワザとして「公示送達(こうじそうたつ)」という制度があります。
これは、相手の住所が不明で訴訟や調停の通知を直接送れない場合に、裁判所の掲示板に公告する形で送達に代える方法です。

通常、申立後は相手に書類の写しを郵送して知らせますが、それができないとき公示送達を使って「送達したものとみなす」ことになります。
私の経験上、相手が海外転居で音信不通だったケースで公示送達を用い、審判で養育費の支払いを命じてもらったことがありました。
もちろん相手不在ゆえ強制力を伴う回収は別途考える必要がありましたが、それでも子どもの権利を公的に認めさせた意義は大きいと感じたものです。
ただし、公示送達で審判を得ても、問題はその後の強制執行(実際にお金を取り立てること)です。
住所も財産も不明なままだと、せっかく債務名義(調停調書や審判書等)を取っても差し押さえるターゲットが見つかりません。
例えば銀行口座や勤務先が判明していれば、住所不明でも口座や給料を差押えることはできますが、それすら不明だと回収は難航します。
「結局、公示送達してもお金が取れなきゃ意味がないじゃない…」と落胆するかもしれません。

探偵による所在調査:プロ中のプロに託す
公的な方法で限界が見えたら、最後の手段として探偵に依頼することも選択肢に入ります。
探偵事務所は、弁護士が使える公的記録だけでなく、独自の聞き込みや張り込み、ネット調査などあらゆるルートを駆使して、相手の現在地を割り出すプロです。
特に、元夫が意図的に転居届を出さず身を隠している場合や、住民票ロックをかけている場合など役所では追えないケースでも、探偵なら糸口を見つけ出せる可能性があります。

しかし、探偵に依頼する際に覚悟すべきは費用です。
正直、簡単な所在調査でも20〜30万円、難しくなると50万円以上かかることも珍しくありません。
たとえば「元夫の実家や職場が分かっている」ような比較的簡単なケースなら5〜7日間程度の調査で20万~30万円ですが、手がかりゼロからの大捜索となると1か月以上・50万円超という見積もりも現実的にあります。
ここで「そこまでお金を払う意味あるの?」という疑問もわきますよね。
確かに大金ですが、一方で養育費の総額を考えてみてください。
先ほど試算したように毎月3万円でも10年で360万円です。
仮に50万円かけてでも相手を見つけ出し、残りの養育費300万円超を確保できるなら、十分ペイする投資とも言えませんか?

探偵を使った私の経験談を一つ。
以前、元夫が全国を転々とトラック運転手をして逃げ回り、職務上請求でも追えなかったケースがありました。
半ば藁にもすがる思いで探偵に所在調査を依頼したところ、約3週間で元夫の居場所を突き止めたのです。
なんと彼は京都のネットカフェに寝泊まりしながら働いていたのですが、探偵がSNSの情報と聞き込みを駆使して発見に至りました。

その後、元夫には公正証書に基づいて未払い養育費を一括で支払わせることができ、Fさんはようやく笑顔を取り戻したのです。
もっとも、探偵に依頼する際は業者選びにも注意が必要です。
残念ながら世の中には悪質な探偵業者も存在し、「100%見つけます!」「成功しなければ0円!」などと甘い宣伝文句を並べるところもあります。
過去にいい加減な探偵に依頼してしまい、前金を払ったまま連絡が取れなくなった…なんて被害に遭った方もいました。
そうならないために、探偵業を営むには各都道府県公安委員会への届け出が必要で、「探偵業届出証明書」という許可証があります。
依頼前にそれを提示してくれるか確認しましょう。
また、見積書や契約書をきちんと出してくれるか、やたら「絶対発見保証」など誇大な宣伝をしていないかもチェックポイントです。
さらに、養育費や家族問題の調査実績が豊富な探偵だと安心ですね。

未来へ踏み出す勇気:諦めずに行動を
ここまで読んでくださったあなたは、きっと様々な情報を胸に抱いていることでしょう。
しかし、どうか諦めないでください。
日本では現在、母子世帯の7割以上が養育費を受け取れていないという厳しい現実があります。
だからといって、あなたまで泣き寝入りする必要はありません。
むしろ、あなたが今立ち上がることで、その統計に風穴を開ける一人になるのです。
たとえ相手の住所が分からなくても、今回ご紹介したようにできることはたくさんあります。
まずは市役所で戸籍附票や住民票をたどる一歩から始めてみませんか?
小さな一歩でも、動き出すことで新たな展開が生まれるでしょう。
もし不安なら、役所に行く前に専門家の無料相談を利用してアドバイスをもらうのも良いでしょう。

ここから先は、あなたとお子さんの笑顔を取り戻すための行動あるのみです。