こちらをご覧になっている方が一番気になるのは、「もらってない過去の養育費を、後からまとめて請求できるのか」という点ではないでしょうか。
結論から言えば、原則として過去分の養育費をあとから遡って請求することはできません。
現在の実務では、離婚時から現在まで支払われていなかった養育費を一括で請求するのは難しいという考え方が一般的です。

なぜ取り決めなしだと遡り請求が難しいのでしょうか?
実務上、養育費の支払い開始時期は「請求したときから」と考えられており、離婚後に何年も放置していた期間については「これまで養育費なしでも生活できていたではないか」という理屈が働いてしまいます。
過去に養育費がなくても子どもの生活が成り立っていた事実がある以上、急に「まとめて払え」というのは元夫(義務者)にとって酷だ、というのが家庭裁判所の考え方なのです。

取り決めなしのツケはこのように重くのしかかります。
過ぎてしまった時間を取り戻すことは、現状ではとても困難なのです。
とはいえ、完全に希望がないわけではありません。
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実は裁判例の中には、ごく稀に「裁判所が裁量で過去に遡った養育費の支払いを命じたケース」もあります。
特に、父親が子を認知しておらず請求できない事情があった場合などは例外です。
例えば認知訴訟で父子関係が確認された場合、判例では認知時点ではなく出生時にまで遡って養育費を支払うよう命じられた例もありました。
とはいえ、これは本当に稀なケースです。
「取り決めなしの場合に遡って養育費を請求できた例はほとんどない」のが現実でしょう。
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「後悔先に立たず」だからこそ、離婚時には勇気を持って養育費を取り決めておくことが何より大切なのです。
取り決めした養育費は過去に遡って請求可能です
一方で、「取り決めはしたのに払われていない!」というケースも後を絶ちません。
約束を反故にされた怒り、そして「どうしたらいいの?」という困惑…。
こちらをご覧になっている方で、毎月通帳を確認してはため息をついている方もいるのではないでしょうか?
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養育費の未払いが続く現実は、決して珍しくありません。
データがその深刻さを語っています。
厚生労働省の調査によれば、離婚後に養育費の取り決めをしている母子家庭でも「現在も受け取っている」ケースはわずか57.7%しかありません。
つまり、約4割は取り決めがあっても支払われていないのです。
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しかし、泣き寝入りする必要はありません。
一緒に対策を考えていきましょう。
まず押さえておきたいのは、未払い養育費は法的には債務(借金)と同じだという点です。
取り決めさえしてあれば、支払われていない過去分も当然に請求する権利があります。
しかしながら、ここにも落とし穴が…。請求には期限があるのです。
養育費の支払い請求権には消滅時効が設定されており、一定期間が経つと法的に請求できなくなってしまいます。
チェック 養育費の請求時効についてはこちらで詳しく解説しています。
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では、具体的に何ができるのでしょうか?
まず未払いが判明した時点で内容証明郵便を送り、相手に正式に支払いを求めましょう。
これは、時効の進行をストップさせる意味もあります。
内容証明で督促すると、その時点で時効が6か月リセットされます。
チェック 養育費を相手に請求する内容証明の書き方と効果について
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養育費の未払いに怒りや悲しみを感じるのは当然ですが、その感情を少しでも早く行動に変えることが大切です。
諦めないで:過去の養育費を取り戻すために今できること

ここまで読んで、「やっぱり過去分は無理なの?」と落胆している方もいるかもしれません。
それでも諦めないでください。
過去にもらえていない養育費を少しでも取り戻すために、今からでもできることがあります。
まず、ダメ元でも相手に交渉してみることです。
過去の養育費について家庭裁判所は消極的ですが、交渉自体は何ら違法ではありません。
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元夫が応じて任意に支払ってくれるなら、何の問題もないのです。
「ダメで元々」の精神で、まずは連絡を取ってみましょう。
ただし、説得のコツがあります。
ただ感情的に「払って!」と責めても、相手も身構えてしまうでしょう。
そこで有効なのが、具体的な数字とエビデンスを示すことです。
例えば、離婚後にあなたが立て替えた子どもの学費や塾代、医療費の総額を計算して伝えてみてください。
可能なら領収書や通帳の写しなど裏付け資料も用意します。
「この3年間で○○万円を子どものために支出しました。あなたにもその一部を負担する義務があります」と冷静に話せば、相手も現実を直視せざるを得ません。
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私が関わったケースでは、元夫が子どもの塾の月謝明細を見て「こんなにかかっていたのか…」と青ざめ、自ら「過去半年分は払わせてほしい」と申し出た例もありました。
相手の良心に訴える一手ですが、具体的な数字は心に響きます。
話し合いで埒が明かない場合、家庭裁判所に調停を申し立てることを検討しましょう。
取り決めが無かった場合でも、調停を申し立てた月から養育費支払いが開始されるのが通常です。
過去分は難しくても、「これ以上遅らせない」ことが何より重要です。
思い立ったが吉日、早めの行動でこれから先の養育費を確保しましょう。
調停申立てには、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に収入印紙(子1人につき1,200円)と申立書類一式を提出します。
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初めてだと不安かもしれませんが、窓口で丁寧に教えてもらえますし、弁護士に依頼すれば代理人として手続きを進めてもらえます。
また、既に取り決めがあるのに支払われていない場合は、強制執行も視野に入れましょう。
給与差し押さえ以外にも、相手名義の銀行預金、不動産などを差し押さえる方法があります。
最近では、自宅に居ながらオンラインで強制執行を申し立てる電子手続きも一部導入され、利便性が増しています。
「そこまでやるのは気が引ける…」という方もいるかもしれません。
しかし、それで子どもの生活が守れるなら、ためらう必要はありません。
養育費は子どもの権利でもあります。
あなた一人のわがままではないのですから、堂々と権利行使していいのです。
最後に、専門家への相談も強くお勧めします。
弁護士であれば、適切な金額計算から交渉、調停、強制執行まで一貫してサポートできます。
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一人で抱え込まず、信頼できる専門家に今の気持ちをぶつけてみてください。
きっと明るい展望が開けるはずです。
希望と提案:未来を見据えて歩もう

ここまで読んでくださったあなたへ、未来志向のメッセージを送らせてください。
過去にもらえなかった養育費を完全に取り戻すことは簡単ではないかもしれません。
それでも、あなたとお子さんの未来にはまだ多くの希望が残されています。
事実、国もこの問題に立ち向かい始めました。
令和6年の民法改正では、離婚時に養育費の取り決めがなくても一定額の「法定養育費」を請求できる制度が創設される予定です。
これは子どもの最低限の生活費を国が定める仕組みで、今後「取り決めなし=ゼロ」という事態を防ぐことが期待されています。
さらに養育費の請求権には、先取特権(優先的に回収できる権利)も付与される方向です。
時代はゆっくりと、しかし確実に変わろうとしています。
これまで頑張ってきたあなたの努力は、決して無駄にはなりません。
過去を嘆くだけでなく、「今から何ができるか」を一緒に考えてみましょう。
子どもの未来を守るために行動するあなたは、決して独りぼっちではありません。
弁護士
私たち専門家や支援制度、そして何よりあなた自身の強さが、必ずや支えになってくれるでしょう。





一緒に対策を考えていきましょう。







きっと明るい展望が開けるはずです。

