離婚後、まずは話し合いで養育費の約束を取り付けようと努力する方がほとんどです。
それでも相手が話し合いに応じなかったり、調停(家庭裁判所での話し合い)が不成立になる場合もあります。
調停で合意できなかった場合、「家庭裁判所の審判」という次のステップがあります。
例えば、調停で相手が姿を現さず不調に終わった場合は、審判手続きへと移行します。

簡単に言うと「家庭裁判所による判決」のようなものですが、離婚訴訟とは異なり、もう少し柔軟でスピーディーな場面もあります。
調停委員と顔を突き合わせる形式から一転、審判では法壇の上の裁判官が最終判断者となり、公正証書と同等の効力を持つ結果(審判書)が下されます。
私の経験上、調停から審判への移行は自動的かつ速やかに進むことが多く、依頼者に余計な負担を強いるものではありません。
ふと「裁判なんて大げさでは?」と尻込みする方もいますが、審判手続は非公開で行われ、傍聴人もおらずプライバシーは守られます。

審判になったら養育費の金額はどう決まる?
「審判になったら一体いくら支払われるの?」と不安になりますよね。
裁判官は闇雲に金額を決めるわけではありません。
ここで登場するのが「養育費算定表」という強い味方です。
養育費算定表とは、東京・大阪の家庭裁判所の裁判官らが共同研究して作成した、標準的な養育費の目安表で、現在は各家庭裁判所で参考資料として広く活用されています。

参考 養育費の算定表についてはこちらで詳しく解説しています。
具体的には、例えば子どもが一人(0~14歳)であれば、父母の収入にもよりますが毎月約4万~6万円が相場となります。
裁判官は当事者から提出された源泉徴収票や給与明細などの証拠を確認し、算定表をベースに「このケースでは5万円が妥当だろう」といった判断を下します。
もちろん算定表はあくまで目安であり、子どもの特別な事情(私立学校の学費や障がいによる療育費用など)があれば増減もありえます。
しかし大半の案件では算定表の範囲内で金額が決まるため、依頼者にとっても見通しが立ちやすく安心でしょう。
私も依頼者と一緒に算定表を見ながら、「この収入なら大体◯万円くらいですね」と事前にシミュレーションするようにしています。

審判を起こすべきか迷うあなたへ
「裁判沙汰にしたら元夫との関係がもっと悪化するのでは?」「審判をしてもどうせ払ってくれないのでは?」そんな葛藤を抱えて二の足を踏んでいませんか?
確かに、法的手続を起こすことに心理的抵抗があるのは自然な感情でしょう。
しかし、審判で養育費が決まれば、それは公的なお墨付きとなります。
相手が支払わなければ、家庭裁判所から履行勧告(約束どおり支払うよう促す通知)を出してもらうこともできます。
それでも尚支払わない場合、地方裁判所で給料や預金を差し押さえる強制執行だって可能です。

統計上、養育費が正しく支払われていないケースは全体の7割にも上るとの報告もあり、こうした社会問題を是正するため、令和6年改正民法では養育費の強制回収を強化する仕組み(先取特権の創設等)が盛り込まれました。
つまり、「払わなくても逃げ得」という時代は終わりつつあるのです。
お子さんの未来のために、一歩踏み出してみませんか?
法律は決して冷たいものではなく、弱い立場のあなたとお子さんを守るためにあります。
