養育費が支払われない…そんな悩みを解決する「間接強制」とは
離婚した相手から、子どものための養育費が支払われない…。
取り決めをしたにもかかわらず、約束が守られないのは、精神的にも経済的にも大きな負担ですよね。
「もうどうしたら良いのか分からない」
そんな風に一人で悩んでいませんか?
実は、養育費の未払い問題には「間接強制」という法的な手続きがあるのをご存知でしょうか。
この手続きは、支払いをしない相手に対して、裁判所を通じて「支払わなければ、ペナルティとしてお金を課しますよ」と警告することで、自発的な支払いを促す強力な方法です。
この記事では、養育費の未払いで悩んでいるあなたのために、弁護士が「間接強制のやり方」について、分かりやすく解説していきます。
- 間接強制ってそもそも何?
- どういう場合に利用できるの?
- 具体的な手続きの流れや費用は?
といった疑問に全てお答えしますので、ぜひ最後まで読み進めてください。
そして、あなたとお子さんの未来のために、正しい知識を身につけて、次の一歩を踏み出しましょう。

そもそも養育費の「間接強制」とは?
まずは、「間接強制」がどのような手続きなのか、基本的なところからご説明します。
間接強制の仕組み:相手に心理的なプレッシャーを与える
間接強制とは、裁判所が「定められた期間内に義務を果たさない場合、制裁金(間接強制金)の支払いを命じる」と決定を下すことで、義務者に心理的なプレッシャーをかけ、自発的に義務を履行させる手続きです。
養育費のケースで言えば、「〇月〇日までに未払い分の養育費を支払わなければ、1日あたり〇円の間接強制金を、養育費とは別に支払いなさい」といった命令が出されることになります。
この「間接強制金」は、あくまでもペナルティであり、あなたが受け取る養育費そのものではありません。
しかし、支払いを無視し続ければ、その分だけ相手の金銭的負担が増えていくため、「それなら早く養育費を支払った方が良い」という気持ちにさせ、支払いを促す効果が期待できるのです。
ポイント
間接強制は、相手の財産を直接差し押さえる「直接強制」とは異なり、相手の意思に働きかけて支払いを促す、という特徴があります。
なぜ養育費の支払いで間接強制が認められるのか
本来、お金の支払いを目的とする権利(金銭債権)については、財産を差し押さえる「直接強制」が原則であり、間接強制は認められていません。
しかし、養育費は、子どもの生活を支えるために不可欠な、極めて重要性の高い権利です。
そのため、法律(民事執行法)で特別に、養育費のような扶養に関する権利については、間接強制による強制執行が認められているのです。
これは、子どもの利益を最優先に守るべき、という考えが根底にあるからです。
間接強制の申立てができるケース・できないケース
強力な手段である間接強制ですが、誰でもいつでも利用できるわけではありません。
申立てをするためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
申立てができるのは「債務名義」がある場合
間接強制の申立てを行うためには、「債務名義(さいむめいぎ)」を持っていることが大前提となります。
債務名義とは、養育費の支払い義務があることや、その金額、支払方法などが法的に証明された公的な文書のことです。
具体的には、以下のようなものが該当します。
- 調停で取り決めた内容が記載された「調停調書」
- 審判で決定された内容が記載された「審判書」
- 裁判の判決が記載された「判決書」
- 強制執行認諾文言付きの「公正証書」
口約束や、夫婦間で作成した合意書だけでは、原則として債務名義とはならず、間接強制の申立てはできません。
もし、まだ債務名義をお持ちでない場合は、まず家庭裁判所に養育費請求の調停を申し立てることから始めましょう。
申立てが難しいケース
一方で、債務名義があったとしても、間接強制の申立てが認められない、あるいは効果が期待できないケースもあります。
それは、相手に支払い能力が全くない場合です。
間接強制は、あくまで相手に心理的なプレッシャーをかける手続きです。
そのため、病気や失業などで本当に収入がなく、支払いたくても支払えない状態の相手に対しては、裁判所も間接強制の決定を出さない可能性があります。
また、仮に決定が出たとしても、元々支払い能力がないため、結局支払われずに終わってしまう可能性も考えられます。

養育費の間接強制のやり方【完全ステップガイド】
それでは、実際に間接強制を申し立てる際の手続きの流れを、4つのステップに分けて具体的に見ていきましょう。
- 準備段階:必要書類の収集
- 申立て:家庭裁判所への手続き
- 審理:裁判所での手続き
- 決定:間接強制命令の発令
ステップ1:準備段階
まず、申立てに必要な書類を準備します。
主に必要なのは以下の2点です。
執行力のある債務名義の正本
調停調書や審判書、判決書などの正本です。
これらの書類には、裁判所から「執行文」というものを付与してもらう必要があります。
債務名義の正本送達証明書
債務名義の正本が、相手方に間違いなく送達されたことを証明する書類です。
これも裁判所で発行してもらいます。
この他にも、事案によっては追加の資料提出を求められることがあります。
ステップ2:申立て
書類の準備ができたら、いよいよ家庭裁判所に申立てを行います。
申立書の作成
「間接強制申立書」を作成します。
書式は裁判所のウェブサイトからダウンロードすることもできますが、記載内容が専門的であるため、弁護士に作成を依頼するのが確実です。
提出先
申立ては、債務名義を取得した家庭裁判所に対して行います。
費用
申立てには、収入印紙2000円分と、連絡用の郵便切手が必要になります。
(郵便切手の金額は裁判所によって異なります)
ステップ3:審理
申立てが受理されると、裁判所で審理が始まります。
裁判所は、申立人と相手方の双方から事情を聴く「審尋(しんじん)」という手続きを行うのが一般的です。
審尋の期日には、裁判所に出頭する必要があります。
この場で、なぜ支払いが履行されないのか、相手方の支払い能力はどうか、といった点について、主張や立証を行っていくことになります。
ステップ4:決定
審理の結果、裁判所が間接強制を認める判断をした場合、「間接強制決定」が出されます。
この決定には、いつまでに支払うべきか、支払わなかった場合に課される間接強制金の額などが明記されています。
この決定が相手方に送達されることで、法的な効力が発生し、相手は支払いの義務と、支払わなかった場合のペナルティを負うことになります。
ココがポイント
間接強制の手続きは、法律の専門知識が不可欠です。書類の準備から裁判所での対応まで、一人で行うのは非常に困難な道のりです。スムーズかつ確実に手続きを進めるためには、養育費問題に詳しい弁護士のサポートを受けることを強くお勧めします。
間接強制のメリットとデメリット
間接強制は強力な手続きですが、メリットだけでなくデメリットも存在します。
両方を正しく理解した上で、利用を検討することが大切です。
メリット
相手に強い心理的プレッシャーを与えられる
「支払わなければペナルティが課される」という状況は、相手にとって大きなプレッシャーとなり、自発的な支払いを促す高い効果が期待できます。
相手の財産が分からなくても利用できる
給与や預金などの差し押さえ(直接強制)は、相手の勤務先や銀行口座を特定する必要があります。
しかし、間接強制は相手の財産が分からなくても申立てが可能です。
デメリット
相手に支払い能力がないと効果が薄い
前述の通り、相手に全く支払い能力がない場合は、プレッシャーを与えても支払いが期待できず、手続きが無駄になってしまう可能性があります。
手続きに時間と費用がかかる
申立てから決定まで、数ヶ月程度の時間がかかるのが一般的です。
また、弁護士に依頼する場合は、その費用も発生します。
間接強制金を回収するには別途手続きが必要
万が一、相手が養育費も間接強制金も支払わなかった場合、その間接強制金を回収するためには、改めて「直接強制」の手続きを申し立てる必要があります。
もっと詳しく
当事務所では、養育費に関するご相談は何度でも無料です。また、弁護士費用についても、相手から養育費を回収できた場合にのみ費用をいただく「完全成功報酬制」を採用しています。着手金は0円ですので、「弁護士に相談したいけど、費用が心配…」という方も、どうぞご安心ください。
一人で悩まず、まずは弁護士にご相談ください
ここまで、養育費の間接強制について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
間接強制は、未払いの養育費を回収するための非常に有効な手段です。
しかし、その手続きは複雑で、法律の専門知識がなければ、ご自身で進めるのは簡単なことではありません。
途中で挫折してしまったり、不利な結果になってしまったりする前に、ぜひ一度、私たち弁護士にご相談ください。
私たちは、養育費の未払いで悩む多くの方々をサポートしてきた実績があります。
あなたの状況を丁寧にお伺いし、間接強制が最善の方法なのか、それとも他の方法が良いのか、専門家の視点から的確にアドバイスいたします。

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