離婚後、毎月の養育費の支払いが約束の日に振り込まれず、通帳を見ては「また今月も遅れてる…」と頭を抱えていませんか?
ひとり親にとって養育費滞納は生活設計を狂わせる深刻な悩みです。
「養育費の支払いが遅れた場合でも、そんなの泣き寝入りするしかないんじゃ…」と半ば諦めてはいないでしょうか。

なぜなら養育費も金銭の支払い義務であり、期日どおりに支払われなければ債務不履行として扱われるからです。
民法上、金銭の給付を目的とする債務が履行期に履行されない場合、債権者(養育費をもらう側)は債務者(支払う側)に対し遅延損害金という形で損害賠償を請求できると定められています(民法第419条第1項本文)離婚時の取り決めで遅延損害金について特に合意していなくても、法律に基づき自動的に発生する権利なのです。
これは「支払いが遅れたこと自体による経済的損失(機会利益の喪失)」を埋め合わせるための当然の権利と言えるでしょう。

催促の電話を入れようが入れまいが、期日を過ぎれば1日ごとに利息がじわじわと加算されていくイメージです。
法律上は債権者に有利な特別ルールもあり、遅延による損害の証明は不要(民法第419条第2項)です。
たとえ支払い遅延の原因が相手の病気や災害など不可抗力であっても免責はされません(民法第419条第3項)。
「給料が減って払えないんだ…」という言い訳は通用しない仕組みになっているのです。

数字で見る遅延損害金:利率と計算方法
では、具体的に遅延損害金はいくらくらいになるのでしょうか。
例えば、月々の養育費5万円の支払いが3ヶ月(約90日間)滞ったケースで考えてみます。
離婚協議書などで特に利率の取り決め(約定利率)をしていなかったと仮定すると、法律の定める法定利率が適用されます。
2020年の民法改正以降、法定利率は年3%(変動制)となっており、2023年4月の見直し時点でも年3%に据え置かれています。
この年3%を用いて遅延損害金を計算してみましょう。
計算式はシンプルで、
遅延損害金額 = 未払い養育費額 × 遅延日数 × 年利率 ÷ 365日
となります。
先ほどの例では未払い額5万円、遅延日数90日、年利率3%ですので、
50,000円 × 90日 × 0.03 ÷ 365日 ≒ 369円
となります。意外に思われましたか?
3ヶ月で約369円というとコーヒー1杯分程度で、「こんなもの?」と肩透かしに感じるかもしれません。

しかし、遅延損害金はあくまで各月ごと・日割りで発生するものです。
支払い遅延が長期間・複数月にわたれば、その都度生じる利息を積み上げていくことになります。
例えば、毎月5万円の養育費が1年間まったく支払われなかった場合、各月について遅延日数が経過するごとに利息が発生し続け、トータルの遅延損害金は数千円規模にも膨らむでしょう。
もちろん元本である未払い養育費そのものは何十万円もの大金ですから、それに比べれば遅延損害金は「おまけ」のような金額かもしれません。
それでも、「払うべきものを払わずに放置すれば余計な負担が増える」という事実は、義務者にプレッシャーを与える効果があります。

なお、離婚時に元配偶者同士で「支払いが遅れた場合は年○%の利息を付ける」と約定利率を決めていた場合は、その利率で計算できます。
例えば公正証書や調停調書に「遅延時の損害金利率:年5%」と記載があれば、法定利率3%より高い5%に基づいて請求可能です。
約定利率には法律上明確な上限はなく、当事者の合意で自由に定められます。
ただし極端に高すぎる利率は公序良俗に反し無効になる恐れがあります。
合意がある方はその利率で、合意がない方は年3%(支払時点の法定利率)で、それぞれ遅延損害金を計算してみてください。
電卓片手に計算すれば、「滞納○ヶ月で利息はいくらくらい溜まっているのか」が具体的に見えてくるはずです。

遅延損害金請求のポイント
養育費は、権利者が適切に行動すれば、遅延損害金も含め回収できる可能性は高くなります。
とはいえ、相手が素直に応じない場合には現実的な回収手段を検討しなければなりません。
まず、最初にすべきは催促です。
電話やメールで「期日までに支払われていません。遅延損害金も含めてお支払いください」と通知してみましょう。
単なるうっかりや一時的な金銭困難であれば、この働きかけで支払ってくれる場合もあります。
