婚姻費用の分担請求とは?別居中の生活費を受け取る方法を弁護士が解説

「相手と別居しているけれど、生活費が足りなくて困っている…」

「離婚はしていないけれど、生活費を払ってもらえない…」

このようなお悩みをお持ちではありませんか?

夫婦である以上、お互いの生活を助け合う義務があります。たとえ別居していても、収入の多い方が少ない方へ生活費を支払う義務があるのです。

この生活費のことを「婚姻費用」と呼びます。

もし相手が婚姻費用を支払ってくれない場合、法的な手続きを通じて請求することができます。それが「婚姻費用の分担請求」です。

この手続きについて、詳しく見ていきましょう。

婚姻費用の分担請求とは?

婚姻費用の分担請求とは、夫婦の一方がもう一方に対して、婚姻生活を維持するために必要な費用の分担を求める法的な手続きです。

民法第760条では、「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」と定められています。これは、夫婦がお互いに協力し、扶助しあう義務(民法第752条)に基づいています。

つまり、夫婦は離婚が成立するまで、お互いの生活レベルが同等になるように助け合わなければならないのです。

  • 別居しているが、離婚はしていない
  • 相手の方が収入が多い
  • 生活費の支払いを拒否されている

このような状況にある場合、婚姻費用の分担請求を検討することができます。

弁護士
「養育費」とは違うの?と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。婚姻費用には、ご自身の生活費だけでなく、お子様の養育費も含まれるんですよ。

婚姻費用にはどのような費用が含まれるの?

婚姻費用には、夫婦や未成熟の子が、その収入や社会的地位に応じた通常の社会生活を維持するために必要な費用が含まれます。

具体的には、以下のような費用が挙げられます。

  • 生活費:食費、光熱費、家賃など
  • 子どもの費用:養育費、学費、医療費、習い事の費用など
  • 医療費:ご自身の医療費
  • 交際費:相当な範囲での交際費

ココがポイント

婚姻費用は、「別居していても離婚が成立するまで」請求できる権利です。過去に遡って請求することも可能ですが、一般的には請求した時点からの分しか認められないことが多いです。そのため、お悩みの方は一日でも早く行動を起こすことが大切です。

婚姻費用はいくらもらえる?算定方法について

婚姻費用の金額は、夫婦双方の収入や子どもの人数、年齢など、様々な事情を考慮して決められます。

実務では、家庭裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」を参考にすることが一般的です。

この算定表は、夫婦双方の年収と、子どもの人数・年齢に応じて、婚姻費用の目安となる金額が分かるようになっています。

算定表は、裁判所のウェブサイトで確認することができます。ご自身の状況に近いケースを探して、おおよその金額を把握しておくと良いでしょう。

ただし、算定表はあくまで標準的なケースを想定したものです。個別の事情によっては、算定表の金額から増減することがあります。

弁護士
ご自身のケースで具体的にいくら請求できるのか知りたい場合は、専門家である弁護士にご相談いただくのが確実です。当事務所では、婚姻費用に関するご相談は何度でも無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

婚姻費用を請求する手続きの流れ

婚姻費用を請求するには、どのような手続きを踏めば良いのでしょうか。基本的な流れは以下の通りです。

  1. 当事者間での話し合い
  2. 家庭裁判所での調停
  3. 審判手続き

1. 当事者間での話し合い

まずは、夫婦間で婚姻費用の分担について話し合います。金額や支払方法などを決め、合意できれば、その内容を公正証書として残しておくことをお勧めします。公正証書を作成しておけば、万が一支払いが滞った場合に、強制執行の手続きをスムーズに進めることができます。

2. 家庭裁判所での調停

話し合いで合意できない場合や、相手が話し合いに応じない場合は、家庭裁判所に「婚姻費用分担請求調停」を申し立てます。

調停では、調停委員が間に入り、双方の事情を聴きながら、解決に向けて話し合いを進めます。調停で合意に至れば、その内容が調停調書に記載され、法的な効力を持ちます。

もっと詳しく

調停申立てに必要な主な書類

  • 申立書
  • 夫婦の戸籍謄本
  • 収入に関する資料(源泉徴収票、給与明細など)

申立てには、収入印紙1200円分と、連絡用の郵便切手が必要です。

3. 審判手続き

調停でも話がまとまらない場合は、自動的に「審判」という手続きに移行します。審判では、裁判官が双方の主張や提出された資料などを基に、婚姻費用の金額などを最終的に判断します。

請求が認められやすいケース・認められにくいケース

婚姻費用の請求は、基本的には夫婦である限り認められる権利ですが、状況によっては認められにくくなるケースもあります。

請求が認められやすいケース

・相手に十分な収入がある

・ご自身に収入がない、または少ない

・未成熟の子どもを監護している

請求が認められにくい、または減額される可能性があるケース

・ご自身が不貞行為(不倫)など、別居の原因を作った側である(有責配偶者)

・ご自身に十分な収入がある

・相手が失業中であるなど、支払いが困難な状況にある

ただし、有責配偶者からの請求であっても、お子様の養育費に相当する部分については、請求が認められるのが一般的です。

婚姻費用を請求する上での注意点とポイント

婚姻費用を確実に受け取るためには、いくつかのポイントがあります。

請求は早めに行動する

前述の通り、婚姻費用は請求した時点からの分しか認められないことが多いため、別居後すぐに請求することが重要です。

収入に関する資料を準備する

ご自身の収入だけでなく、相手の収入を証明する資料があれば、手続きをスムーズに進めることができます。給与明細や源泉徴収票などを準備しておきましょう。

弁護士に相談する

相手との交渉や法的な手続きには、専門的な知識が必要です。弁護士に依頼することで、ご自身の状況に合った適切なアドバイスを受けられ、有利な条件で解決できる可能性が高まります。

一人で悩まず、まずはご相談ください

婚姻費用の分担請求は、別居中の生活を守るための大切な権利です。

しかし、相手との交渉や法的な手続きをご自身だけで進めるのは、精神的にも大きな負担となります。

弁護士
「相手が話し合いに応じてくれない」「いくら請求できるのか分からない」など、少しでも不安なことがあれば、私たち専門家にお任せください。あなたの新しい一歩を、全力でサポートします。

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