強制執行までしたのに養育費が1円も取れない――そんな状況に、「もうお手上げ…」と途方に暮れている方もいると思います。
離婚後、シングルマザーやシングルファザーの方が震える思いで差押えの手続きをしても、相手の口座が空っぽだと ガックリ と肩を落としてしまいますよね。

強制執行でも養育費が取れない現実
「裁判所に頼めば、もう安心できるはず…」と思っていたのに、実際には強制執行しても養育費を回収できない場合があります。
その現実に直面したとき、あなたは愕然として言葉を失ってしまうかもしれません。

経済的に苦しくても本来は支払わねばならない──にもかかわらず、相手に本当にお金や財産がなければ、差押えをしても回収は難しいのが現状です。
例えば元夫が無職で収入がゼロ、預貯金残高もゼロとなれば、いくら判決や公正証書を握っていても回収のしようがないのです。
これは「絞れる水が一滴もない雑巾」をいくら絞っても濡らせないのと同じくらい、虚しい現実と言えるでしょう。
何とかして現状を打破する方法はないのか?
専門家として実務で培った知見を踏まえ、ここから具体策をお伝えしていきます。

時期を見計らって再度の差押え
「一度ダメでも、チャンスはまた来る」──これは強制執行にも当てはまります。
最初の差押えで空振りだったからといって、すぐに諦める必要はありません。
例えば元配偶者の銀行口座を差し押さえたものの残高ゼロだった場合でも、給料日直後などお金が入るタイミングを狙って、再度手続きを申し立てることが有効です。

元配偶者が現在お金を持っていなくても、時間が経てばボーナスや退職金、財産分与の受取りなどで資産状況が変化するかもしれません。
例えば半年後・一年後に相手の状況を改めて調査し、財産が増えていそうであれば再度の差押えを検討してみて下さい。
この「待つ」という戦略はもどかしく感じられるでしょう。
焦燥感でいっぱいになる気持ちは痛いほど分かりますが、ここはグッと堪えて次の好機を逃さないよう備えましょう。
では具体的に、再度の強制執行に向けてどんな準備ができるでしょうか?

強制執行が不発に終わった場合、裁判所を通じて「財産開示手続」を利用できます。
これは元配偶者(義務者)を裁判所に呼び出し、どんな財産を持っているか申告させる制度です。
義務者が出頭しなかったりウソをついたりすれば「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」に処される可能性があり、プレッシャーを与える効果も期待できます。
ただし現実には、罰則があるとはいえ開示手続で有益な情報が得られないケースもしばしばあります。
「財産なんてありません」と開き直られてしまえば元も子もないですよね…。

これは金融機関や公的機関を通じて、義務者の預貯金口座や勤務先などの情報を裁判所経由で入手できる制度です。
例えば一度強制執行を試みてダメだった場合、地方裁判所に申立てをすることで、各金融機関を通じて相手名義の銀行口座の有無や残高を教えてもらえます。
また、義務者の勤務先が不明なら年金機構から社会保険の加入状況を照会して突き止めることもできます。

さらに、給与差押えの継続力も味方につけたいところです。
給与を差し押さえる場合、裁判所の命令が会社に送達されれば、その後は元配偶者が退職しない限り給料日ごとに養育費を天引きし続けられます。
一度の手続で将来分もまとめて確保できるわけですから、長期的に見れば大きな安心材料ですよね。
ただし注意点として、差押え通知を嫌がった元配偶者が会社を辞めてしまう可能性もゼロではありません。
また、中には勤務先の経営者が差押えに非協力的で、従業員である義務者をかばってしまう場合もあるようです。
その場合でも、差押え命令から1週間が過ぎれば給与取立権が生じますので、会社に対して支払を求める訴訟(取立訴訟)を起こす手もあります。
もっとも訴訟は時間と手間がかかるため、専門家に状況を相談しながら進める方が現実的でしょう。

祖父母など第三者からの支払い確保
強制執行でも取れない、再チャレンジも難しい…となったとき、藁にもすがる思いで考えるのが「他の人から代わりに払ってもらえないか?」という策です。
特に相手方の両親、つまり子どもの祖父母に援助を求められないか、と悩む方もいるでしょう。

養育費はあくまで実の親が負う義務であり、離婚は当事者同士の問題ですから、「息子(娘)が払わないから親が肩代わりせよ」と強制することはできないのです。
「そんな…冷たい」と思われるかもしれませんが、ここはまず原則を押さえておきましょう。
しかし、状況次第では祖父母から経済的支援を受けられる可能性があります。
参考 「養育費を相手の親に請求できるのか?」についてはこちらで解説しています。
未来への希望を捨てないで下さい
養育費の強制執行でお金が取れないとき、絶望感で心が押し潰されそうになるでしょう。
それでも、ここまで見てきたように完全な行き止まりではありません。
再度の差押えに向けた戦略を練り、法律の新しい制度を駆使し、周囲の支援を仰げば道は開ける可能性があります。
